中古車オークションの現実 高く売れるか?安く買えるか?
中古車オークションをわかりやすく
リクエストカード
私が以前勤務していた某大手ディーラー中古車部には、仕入れ担当の人がいました。私たち中古車の営業は、展示場の在庫をベースに中古車をおススメするのが基本ですが、やはり中には「この色じゃなきゃダメだ」「走行距離は2万キロ以下でね」「マイナーチェンジ前のが好きなんだよなぁ」「あの限定車、何だっけ、リミテッドを探しているんだ」などなど、お客様によって限りないニーズがあります。私は何度か転勤しましたし、所長や係長も都度配置換えになりますので、10人程の上司から指導を受けた経験があります。また、研修などで、販売台数の突出しているトップセールスマンと話をする事もありました。その中でいろいろと販売に関する知識を勉強して行ったわけですね。上司によっては「中古車の営業の仕事は、この展示場にある車を勧めて買ってもらう事だ」という人と「きちんと要望を聞いて探してあげなさい」という人がいました。「探してあげますよ」という事になった場合に備え、私たちは常に「リクエストカード」なるものをポケットに忍ばせていました。リクエストカードには、お客さまのご希望の車種の明細をご記入いただく欄があり、お客様のお名前、ご連絡先をご記入いただくようになっていました。
車を捜す
ちなみに私が中古車の営業をしていたのは、平成になる前、昭和の終わりの数年です。当時はもちろん、携帯電話などありませんでした。リクエストカードを頂くと、私たちはまず、打ち出されたリストを使って同じ会社のマイカーセンター内を探します。リストでなければ電話して探します。それでもなければ、上司に頼んで同系列の他社をあたってもらいます。これがまた難しいのですが、人気車であればあるほど、マイカーセンターは自分の店に在庫しておきたいものです。「商談させて下さい」とお願いしても「商談中だから」と言われてしまう事が多くあり、私の場合は車を探すのがとても難しいと感じました。
そんな時に頼りになるのが、本社中古車部にいた、買取担当のAさんだったのです。月に何度か、TAA(トヨタオートオークション)や、CAA(中部オートオークション)などに出張して、私たちの希望を吸い上げ、買取活動をしてくれていました。例えばこんな感じです。かなりレアです。「71レビンのアペックスありませんか?黒ツートンの青いラインのやつじゃなきゃダメなんですよ~」「わかんねーけど、捜してきてやるな」と、話しやすかったので、私はAさんが大好きでした。ちなみに、アペックスは86からは見るようになりましたが、71のものは殆どありませんでした。今画像検索で見ましたが、300枚位の写真を見ても1枚しか出てきませんでした。私は販売系列店が違っていたので、これはかなりの難題でした。
車はない あっても高い
中古車のオークションは、沢山の業者が車を仕入れるために参加しています。でも、沢山の人がいますので、人気車ともなれば価格が吊り上がり、それこそ青天井で、通常の商売であれば利益など出る価格で買うことはできません。人気があるとはいえないだろう普通の車であっても、状態にイレギュラーな要素がない限り、価格は上がります。おそらく皆が「オークションにせっかく来ているのだから、何台かは仕入れをしなければいけない」という思いがそうさせるのかもしれません。膨大な数の車がセリにかけられるという独特のやり方も、参加者に買いを迫る、価格上昇の隠れた要因だと私は思っています。仮にこの時オークションにTE71レビン、アペックスのツートンが出品されたとしても、Aさんは買うことができなかったでしょう。それほどに、中古車オークションでの仕入れは価格が高いのです。限定車、人気車、走行僅か、程度極上、いい条件が揃えば揃う程、価格は上がって行きます。「安く買えるか」という質問に対しては、私は現場での経験から「安くは買えません」と言いきる事ができます。何故なら、今だから言えますが、Aさんがオークションで買ってきた車は、殆どのケースで原価が小売価格と同じくらいの価格になっており、利幅がなく、商売としては全く成立しないものであったからです。私のいた会社は当時は景気も良く、何とか損を吸収する事ができていたようですが、市場、景気共に厳しい今は、こんな事をやっている会社は潰れてしまうでしょう。
素人参加で高く売れるか?
中古車オークション代行などの看板を見かけることも多くなりました。私たち素人がオークションで車を売るという選択肢はあるのかを考えてみましょう。私は自分の車を10台程度売買してきましたが、一度もオークションを使ったことはありません。理由はメンドクサイからです。友人に頼んで、出品して、落札されて、お礼をしなければなりません。いくら仲が良い友人であっても、いくら顔が知れているビジネスパートナーであっても、お金が絡むので、お互いやりずらいのです。このようなしがらみのない業者に頼むという選択肢もありますが、何だりかんだりでかなりの手数料を取られます。中古車の雑誌などを見て、自分の車がプレミア的な位置にあるのが確認できた場合ならいいと思います。価格はそれこそ、青天井で上がることでしょう。でも、価格が上がればその分だけ、利益は折半、利益をシェアしなければならないのが商売の原則です。中古車のオークションの素人参加は、仮に間に知人を挟んでの参加であっても、皆様が思っている以上に出品のハードルが高く、手数料が高く、儲かった!と実感できるのはごく限られた場合だけだろう、多くの場合は「何とか売れたけど、思った以上に手元には残らなかった」という結果になると思います。また、パートナーにお願いする場合はよく話し合わないとトラブルの元になります。このように、いろいろとめんどくさい事がありますが、それでもなおかつ自分の車の価値に自信があり、パートナーともきちんと利益の折半方法などを話し合って、トラブルにならない自信があるのなら、私は否定はしません。
私がオークションを使わなかったもう一つの理由
私のそばには、いつも中古車業界の人が出入りしていました。また、隣の机に座っていた業販の営業の電話を聞いているだけで、相場観も養う事ができたように思っています。車というものは、条件さえそろえば、思った以上に簡単に現金化することができます。車を見てもらい、値段さえ折り合えば、書類を揃えてカギを渡すだけでお金をもらう事ができるのです。わざわざ「メンドクサイ」オークションに出さなくても、簡単に、トラブルなく、現金化できるという環境が整っていた、その事を毎日仕事の中で目の当たりにしていた、というのが、私がオークションを利用しなかった大きな理由です。それは30年も前の話ですが、今ではもっともっと便利になり、インターネットの環境が整い、スマホが普及し、誰もが簡単に自分の車を売却できるようになって来ました。私が自動車ディーラーの中古車マイカーセンターにいたからこそ受けていた恩恵を、スマホでピピッとするだけで、あなたも受けることができるのです。メリットやもちろんある意味デメリットもありますが、こちらの方法の方がよっぽど簡単で、ローリスクで、なおかつハイリターンを期待できると思います。是非お読みになってみて下さい。
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