運送業界の危機

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運送業は危機にある?

 かつて私は、車両保有台数2000台以上の、とある中堅運送会社に勤めていました。運転手として応募し採用され、勤務していたのですが、その会社には組合があり、私は組合の役員をしていました。半ば強制的に参加させられたわけですが、10年以上前のこの組合活動の中、とあることが既に懸念されていました。それは、将来運転手が不足して、運送業界が立ち行かなくなる、という話です。当時は「そんなことはないだろう」と思っていましたが、さすが大きな会社はこの時既に将来を見据えていたのです。近年マスコミでも取り上げられているように、運送業界は慢性的な人手不足に陥っているのと同時に、一部の業種では自らが導入した時間指定のシステムで混乱し、またある業種では法定外の低い運賃に悩まされています。そして業界全体の問題として、かつては考えられなかった燃料費の高騰、燃料の軽油が100円以上になるという、恐ろしい社会情勢になっているのです。

人が来ない

 実際に運転手になりたいという人はどの位いるのでしょうか。今は就職希望者にとって売り手市場と言われていますが、運送業界も例外ではなく、深刻な人手不足となっています。いくら求人を出しても応募がない、運送業界は人気のない職業になってしまいました。

かつての佐川急便よ、もう一度

 私が運送業界に入ったのは、佐川急便がはじめてでした。きっかけは求人誌の広告です。採用されればすぐに40万円の給料がもらえる、年収1000万円も夢じゃない、そんな広告に心動かされ、私は運送業界に入りました。以前からトラックの運転には興味があり、この時既に大型免許、牽引免許、大型二種免許などを取得していましたが、大きなトラックにはそれ程の興味はなく、お金に目がくらんで運送業界に入ったという感じです。当時は社会全体が潤っており、運賃も高かったからこそ実現した給料だったのでしょう。私は2年程勤めましたが、最後の年の年収は600万以上ありました。この年収を見れば、運転手になりたいと思う人もいるのではないでしょうか。

給料の良い仕事

 運送の仕事で給料のいい仕事というのは、あるにはあります。でも、その仕事は一時的なものであって、継続的に大きく稼げるという仕事は少ないように思います。また、土木関連の仕事は比較的運賃もいいのですが、月や年、季節によってかなり稼ぎに波があります。私は東日本大震災の被災者ですので敢えて書かせていただきますが、このような大きな災害が、土木建築業やそれに携わる運送会社に対して好景気を生み出しているという現実もあります。

ネット通販

 スマホが普及することによって、ネット通販で物を買う人が劇的に増えてきました。それに伴い、宅配業界の荷物取扱量は右肩上がりに増えています。しかし、運賃はどうでしょう。また、配達に来てくれる人の給料はどうでしょう。送料無料が当たり前というサイトもあります。宅配業界も少しずつ動き出しています。私たちは便利な通販を利用しがちですが、店に行って買える物であれば、お店で買うようにしたいものです。また、時間指定が当たり前と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは日本独自のサービスで、多くの人の苦労の上に成立しているサービスだということを、少しでも考えていただければ、運送業界に携わる者の一人として嬉しく思います。

どうすればいいんだ?

 これは、なるようにしかならないと私は思っています。子供が増えない、若者が結婚しない、スマホで全てが済んでしまう、このような世の中を変えない限り、状況は変化しないと思います。具体的には、昔の生活に戻ることを私は推奨したいのですが、こんな事を言ったところで、見向きもされないでしょう。世の中が便利になればなるほど、人類は知恵を出して将来のことを考えなければなりません。少子高齢化、地球温暖化、環境問題、人類を取り巻く大きな問題は、全て便利が引き起こしているものだと私は考えています。何だか説教じみたお話になってしまって申し訳ありません。一つだけ提案があります。私たちの周りには現在「過剰な便利」が蔓延しています。過剰な部分が見えたなら、それは利用せずに、今できる方法で行ってみて下さい。一人一人が考えていただければ、少しずつ世界は変わっていくはずです。

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