自動車ディーラーは、どうして毎朝掃除をしているのか?
自動車ディーラーの前を通ると、ディーラースタッフが掃除をしている光景に出会います。商品である車ならまだしも、スタッフは前の歩道を、よく掃き掃除しています。自動車ディーラーのスタッフは、どうして毎朝掃除をしているのでしょうか?接客をするそのままのスーツで掃除をしている理由を、ディーラー勤務12年の私がお伝えします。
地域への感謝の気持ち
私が高卒で入社し、配属されたのは中古車のマイカーセンターでした。そこは県道に面しており、端から端までが50mもあるようなとても広い敷地で、県道に向かって20台以上の車を並べることができるポテンシャルを持っていました。入社した当時、右も左もわからない私は、当時の上司から指示を受けるがままに、毎日道路に面している歩道の掃き掃除をしていました。少し前まで高校生、社会に出たばかりのひよっこは、何を考えるでもなく、上司の言われるがままに掃き掃除をしていました。
雪が降った冬のある日
その年は、東京にも沢山の雪が降りました。雪が降ったある日、上司は言いました。「まずは皆が使う歩道をきれいにするんだ。展示車は一番最後でいい。まずは歩道だ」と。私は商品である展示車を一番に掃除すればいいのに、と思いましたが、私なりに上司の考えを理解しました。中古車であれ新車であれ、自動車ディーラーは地域に根差した商売です。地域の方がいらっしゃってこそ成立する商売ですから、常に地域に対して感謝の気持ちを持っています。この「商売させていただいている」という気持ちがありますので、何かがあった時には最優先で地域の事を考えます。歩道の雪かきがされていなかったので凍結し、歩道を歩いていた人が転倒してケガをしてしまった、などということは、絶対にあってはならないのです。地域への感謝の気持ちを込めて、スタッフたちは毎朝、営業所の前を掃除しています。一応これが毎朝掃除をする理由ですが、今の時代、スタッフの中にもいろいろな価値観を持った者がいます。心から掃除の意味を理解しているスタッフがいる反面、中には不満を持ちながら行っている者もいるかもしれません。通勤中、あるいはバスの車窓などから彼らを見るとき、「余裕だなぁ~」などと思ってしまう事も正直ありますが、根底には感謝の気持ちが流れています。
展示車の清掃
新車を販売する自動車ディーラーには、ショールームの中や外の展示スペースに、何台もの展示車があります。ショールームの中に入っている車は新車ですし、外の展示スペースにある車も新車が殆どです。一部にナンバー付きの試乗車などがあるかもしれません。これらの車は、今このお店で販売している新車ですよ、と、商品として展示している車達ですから、いつもきれいに掃除しておく必要があります。これらの車の清掃も販売スタッフの仕事です。スタッフは車を掃除する事が日常になっていますので、その流れで外の掃除も行います。掃除となれば専用のつなぎなどに着替えて行えばいいのでしょうが、スタッフは接客するそのままの姿で展示車を掃除してしまいます。よっぽど水洗いや入れ込んだ清掃の際には着替えると思いますが、大抵は出社してきたそのまま姿で清掃を行います。ちなみに私が所属していた中古車部門は、清掃時にはいつも専用のつなぎに着替えていました。このつなぎ姿での接客はいかがなものかと議論になったこともあり、会社ではこのつなぎでの接客は奨励されていませんでしたが、現場としては問題ないという認識でいました。
比較的電話は少なめか?
私もディーラー退社後はいろいろな仕事に就いて来ましたが、例えば某大手運送会社の社員などは、机に一人二台の電話があり、事務所にいればいつも電話をしているというイメージがあります。今いる運送会社の配車係にしても同じで、携帯を持たされているので実質電話は二台、休みだろうと家にいようとお構いなくで電話がかかって来ています。そのような職業に比べれば、自動車ディーラーの営業は電話は少ない方かもしれません。職業によってはかつての「電話の量」が「メールでの問い合わせ」に切り替わっていますが、自動車販売の業界は、いずれにせよ、ノイローゼになるような問い合わせの量はありません。サービスフロントとなればまた話は違ってきますが、新車販売に関しては、外部から沢山の荷物が来るわけでもありませんし、電話や要件は社内の伝達事項の場合が多く、売れている者は忙しく、売れていない者はそれほどでもない、ということになります。朝から電話やパソコンに張り付かなければならない職種の場合は、外に出て掃除をする余裕などはないと思いますが、このような点も、ディーラーのスタッフが掃除を励行できる理由の一つかもしれません。あくまでもかなり前に退社している私の感想、所見です。現実はディーラー担当者の方に聞いてみて下さい。