トレーラーの運転は難しいのか?どうやってバックするの?
不思議なトレーラーの動き
トレーラーは、運転するヘッドと荷物を積む部分とが一本のピンで繋がっています。普通のトラックとは全く違う構造のため、動くと少し変わった動きをします。ヘッドと後部(この先は台車と呼びます)は連結部を中心にして折れ曲がります。そのため、バックをする際の初期操作では、ハンドルを通常とは逆に切る必要があります。この独特の動きと、狭い箇所にギリギリで入っていくトレーラーは、魅力満載といえるでしょう。
私の経験
私は東京で育ちましたが、大井や横浜で意味もなく海上コンテナのトレーラーを見るのが好きでした。ヘッドが折れ曲がる独特の動きに本能的に惹かれました。かつて勤めていた勤務先の近くに倉庫があり、時々そこに海上コンテナのトレーラーが来ていました。そこそこの広さがありましたが、トレーラーはいつも道路からバックでホームに付けていました。この動きがまた面白くて、トレーラーが来た時にはいつも興味深く観察していました。
トレーラーの動きを研究
当時はインターネットなどまだありません。私はトレーラーの動きを勉強するべく、トレーラーのラジコンを買おうと思いましたが、当時はまだ価格も高く、これを手に入れる事はできませんでした。苦肉の策で、当時持っていたラジコンを引っ張り出し、自分で加工して、後ろに台車を取り付けました。これで、バックをする際の初期の動きを覚えました。ラジコンでは物足りず、何かいい方法がないかと試行錯誤していると、いいものがありました。さて、何だと思いますか?
職場にいい物があった!
当時私は、とあるディーラーの中古車マイカーセンターに勤務していました。そこには、解体屋さんが出入りしており、スクラップとなる車を繋いで、ヤードに牽引して運んでいました。出入りしている解体屋のおじさんがとてもいい人で仲良くなり、いつもいろいろな世間話をするようになっていました。おじさんに、「実はトレーラーに興味があって、練習したいから、ちょっと繋いだ状態の車を運転させてもらえませんか?」と頼んだら、おじさんは快諾してくれました。この、解体屋さんが解体車を繋いだ車で、バックの練習をさせてもらったのです。
免許を取る
解体屋さんの小型トラックと、自ら作ったラジコントレーラーで頭の中を整理し、何とかバックのコツがわかったので、府中の試験場(住所は小金井だけど、みんな府中試験場と言うのですね)に牽引免許を取りに行きました。当時から平日の休みが多かったので、比較的その点ではよかったと思います。確か6回位で合格したと記憶しています。
運転は難しいのか?
職を何度か変わる中で、タンクローリーのトレーラーの運転を10年位しました。トレーラーの運転は難しいのか?と聞かれれば、どうでしょう、前進する分には殆ど問題ありませんが、バックする際にはコツが必要です。大前提として、乗るトレーラーの種類によってもかなり違ってきます。私はタンクローリーに乗っていましたが、例えばその他にも、コンテナを運ぶ「海コン」、重機を運ぶ「重トレ」、自動車を運ぶ「キャリアカー」、鉄骨やコンクリート製品、建設現場の資材運搬、など、様々な種類があります。コツというか、考え方で一番わかりやすかったのは、バックの際、「ヘッドの駆動軸の角度をいつも考えること」です。通常のトラックは、ハンドル操作そのものが舵となりますが、トレーラー(特にバック)の場合は、ハンドル操作をして、ヘッドの駆動軸の角度を調節し、舵を切るイメージです。例えば、真っ直ぐな状態から右へバックしようとする場合なら、ハンドルを少し左に切ってバックし、駆動軸の角度を右にしてやる必要があります。言葉で説明するのはなかなか難しいですが、慣れてくると何も考えずに身体が動くようになります。でも、やはり一番はじめは理屈を頭に入れなければできませんよね。こればかりはホント、身体で覚えるしかないです、というのが、アドバイスです。雪道や凍結路では後ろの重たい部分が押されるので注意が必要です。運転は慣れてしまいますので、難しいと感じるのははじめだけです。でも、いつになっても、道路からの左バック、交通や歩行者を自分で止めての入構というのは嫌ですね。
右バック、左バック
運転席側にバックするのが右バック、ミラーを見ながら左タイヤを先に入れるのが左バックです。右バックの場合は、目視で右側を確認できます。最後、ヘッドを返す際に左前に注意が必要ですが、慣れてくるとそれほど苦ではありません。左バックの場合は、例えば海上コンテナのような背の高い積み荷の場合、折れ方によっては、完全に左側が見えなくなる事もあります。これは慣れるしかありません。海上コンテナの方は得意だと思いますが、私は未だに左バックが苦手です。
長い、短い、どっちがいい?
長いトレーラーの方が、比較的扱いやすいと思います。例えば、真っ直ぐにバックしようとした場合、短いとすぐに後方のタイヤが流れ始めるので、常に注意しながらハンドルを操作しなければなりません。台車が長ければ長いほど、後方のタイヤが流れにくくなりますので、バックの際には楽です。ただ、長いと一般道での右左折が大変になる場合があります。キャリアカーでも、新車を製造工場から港へ配送するなど、ルートが決まっている場合はそれほど苦ではないと思いますが、オークションからいくつかの小さな中古車店を回らねばならない場合などは、かなり大変だと思います。
業種別考察
現場への入構は、タンクローリーの場合はそれほど苦ではありません。頭から入って場内で回転して出てくる事ができます。道路からバックする状況は、それほどないと思います。ポールトレーラーによる長ものやその他、特殊なものの場合も、搬入時間は決められていて、現場にきちんとガードマンが配置されている場合が多いです。切り返したりすることもありますが、入るか入らないかはあらかじめ計算されて配車になっていますので、大きな心配は必要ないかもしれません。現場への重機搬入や鉄骨の搬入、また、中古車をオークションから比較的小さな中古車販売店に搬送するトレーラーなどは、結構大変かもしれません。かつて海上コンテナを運転していた友人は、道に迷ってどうにもならなくなり、最終的にはクレーンで釣り上げてもらって方向転換したことがあると言っていました。プロになったのなら、どこへでも行かねばならないのですが、トレーラーはでっかいので、かなりしんどい場合もあります。